リーダーシップの要素

リーダーが組織の司令塔という部下を見下ろすようなポジションで成果が出せる時代は終を告げています。
本来、リーダーシップは市場の変化する特性を理解した上で、そこで成果を出すことが出来る組織運営の手腕が問われます。さらに組織を構成するメンバーの価値観の変化を汲み取り自らの価値観を常にチューニングする事も必要になります。
このように有効なリーダーシップの要素は刻一刻と変化しているのです。

組織運営に求められるものはそれだけではなく、労働集約型の組織から少数精鋭のハイパフォーマンスチームへの変革も求められています。

このように今やリーダーに求められる要件は高度化、専門化すると共に、組織が生み出す成果はリーダーの手腕しだいであるということができます。

■リーダーシップの要素
近年、マネジメント、マネジャーと言う表現が影を潜め、リーダーシップ、リーダーという表現が幅を利かせるようになりました。
これは、高度成長時代に代表されるように単一品種の大量生産、大量消費時代に有効であった管理型のマネジメントが、長期に渡る多品種、少量生産、少量消費のゼロ成長時代の中で通用しなくなり、新たなリーダー像を模索してきた結果であると言えます。
当初リーダーシップは強いリーダーの代名詞であり、カリスマ性を発揮するリーダーや経営者が脚光を浴びました。しかし、彼らカリスマ経営者自身が感じていたようにリーダーがカリスマであればあるほど、部下はリーダーに依存し、後継者が育たず、カリスマリーダーがその座を退いた途端に組織、企業は一気に衰退していったのです。

徐々の社会がリーダーに求めるニーズは変化していきました。ひと握りの力を持ち組織を牽引できるリーダーではなく、メンバーを育て、権限を委譲し、リーダーが不在であってもチームパフォーマンスが維持できるチームを創れるリーダーへ。

私たちは、このような自律的チームを創れるリーダーを「ファシリテーター」と呼び、チームメンバーとのコミュニケーション手法を「ファシリテーション」、自律的チームを創る手法を「チームビルディング」と呼んでいます。

ここで誤解を招かないように補足しておきますが、これまでのマネジメントやリーダーシップが不要になったということではありません。組織やメンバーの状態に合わせてマネジメント、リーダーシップ、ファシリテーションを使い分ける必要があると言うことです。そして、チーム創りとチームマネジメント全体に一貫して必要となる知識がチームビルディングの理論、理屈であると言えるのです。

チームビルディングに馴染みのない方も多いと思いますので簡単にチームビルディングの理論も含めてお話を進めていくことにします。

「なぜ、マネジメントが上手くいく場合と行かない場合があるのか」或は「目の前のチームに適したマネジメント手法は何なのか」という疑問を多くのリーダーの皆さんはお持ちではないでしょうか。

とても勉強熱心なリーダーは片っ端からマネジメント論、リーダー論を学び、一生懸命実践する。しかし、思うような成果が得られない。これはお医者さんがお腹が痛いと苦しんでいる患者さんに問診や検査もせずに、色々な薬を投与しているのと似ています。

重要な事は患者さんの痛みの原因をしっかり見極め、それに適した処方をすることです。マネジメント論やリーダー論は薬であって、患者さんの病気を見極める方法ではないのです。
この例を組織に置き換えると、患者である組織やメンバーを状態を見極める方法がチームビルディングであり、その状態によってマネジメントを処方するか、リーダーシップを処方するか、ファシリテーションを処方するかという手順になります。

この組織やメンバーの状態を見る尺度がチーム成長プロセスという考え方です。ここで中心となる原則は「チームは成長する」というものです。そして、チームの成長状態に応じて、先程で言えば「痛み」の出方や原因が異なるということです。
ですから、チーム成長の状態を見極められれば、自ずと処方であるマネジメント、リーダーシップ、ファシリテーションのどれを活用するかは決まってくるのです。そして、着実に成果をもたらすのです。

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簡単にチーム成長プロセスについてお話します。実際のチームの成長は大別すると4段階がありますが、ここでは完結に話しを進めるために成長初期、中期、後期の3段階としてお話を進めます。

■チーム成長初期に適したマネジメントと要素

チーム成長初期は、チームメンバーのチームに対する関わり方や仕事に対する姿勢、態度、もちろん能力にもバラつきがあります。ですから、ある程度の管理的な力による手法が必要になります。
ここでの管理的とは力によって押さえつけることではなく、チームとしての規範(メンバー全員が厳守すべきルール)を明確にし、その上で実務能力が不足しているメンバーを集中的に育てていくことです。
ですから、ヘルプ型のマネジメントと言えます。それぞれのメンバーがしっかり成果を出せる(生きていける)ように助けるといったスタンスです。
納期管理や報連相を徹底する一方で、助けて(支援して)ほしい事は何かを常にヒアリングし、チームとして協同で取り組む課題と個別に取り組むべき課題を整理した上で、チーム全体で共有します。まずはリーダーが中心となって進めていきます。
この取り組みが部門内教育(OJT)となり、個々のメンバーの実力の強化に繋がっていきます。
これらの取り組みがある程度定着し、個々のメンバーの実力の底上げが出来てきたら次の段階に進めていきます。ここでの見極めは各メンバーが以前よりも少しずつ自立的な行動ができるようになり始めたと感じられた時です。

■チーム成長中期に適したリーダーシップと要素

チームがチームとしての意味を持つための最も重要な要件は、多様性を表現するための最低限の自立性です。ですから、チーム成長初期で創り出したいチームとしての要素は個々のメンバーの意識面、能力面の自立性なのです。意識が高くても能力がなければ自信を持って発言できませんし、能力が高くても意識が低ければ同様です。
しかし、ネガティブな雰囲気の中で自分の意見を発言することは自立性が高い人材にとっても難しいものです。
ですから、リーダーは徹底したサポート役として関わり、皆の意識がチーム目標の達成に向かうよう牽引していくポジションをとります。
ここで重要となるキーワードが「安全な場」です。安全な場とは非難、否定の無い本音が言える場のことを指しています。
この安全な場を創るために最も重要な行動がリーダー自身の率先垂範です。メンバーに対して先入観を持たず、どんな意見でもまずは受け入れ、内容よりも発言してくれた行為に対して感謝を示す。その上で、誰が言った意見かというレッテルを外し、すべての意見を平等に扱い、実施可能なものから実践していく。この姿勢がリーダーの本気度をメンバーが認識し、強制ではない意識と姿勢の変化をもたらしていきます。
このような取り組みを継続することで、今までほとんど発言しなかったメンバーが発言する用になり、チームの雰囲気がガラッと変わってきます。
そして、リーダーは皆の意見をチーム目標の達成にとって有効か否かを問、誰が言ったかではなく、その内容が尊重されるよう配慮します。そして、チーム目標達成へと牽引(方向づけ)していきます。

■チーム成長後期に適したファシリテーションと要素

チーム成長の後期に入ってくると個人主義的な発言や行動は激減し、誰のどんな課題に対してもチームの一員として全員が発言し、相互支援的な関わりが顕著に増えていきます。
この段階まで成長できたチームには、これまでのような支援的なマネジメントや牽引的なリーダーシップではない新たな関わり方が重要になってきます。
主導権をリーダーからメンバーの移していくためのファシリテーションという関わり方です。そのために最も中心となる役割がビジョン(ゴール、ミッションを含む)の鮮明化と助言、応援といった必要最小限の関わり方です。
まず、ビジョンの鮮明化についてお話します。ビジョンには短期的な目標であるマイルストーン、最終的な目標であるゴール、中長期的なゴールであるビジョンそしてなぜ、そのゴールを達成するのかといった活動の価値や使命を表すミッションが含まれています。
チーム成長中期までは、リーダーが中心となって目標設定を行って来ました。しかし、後期からはメンバーの意志によって目標を決めてもらうのです。目標はどんなに共感をもっていたとしても他者が決めたものであれば、「やらされ感」がどうしても伴ってしまいます。
ですから、最終的には自らが決めることが必要になります。しかし、何の考えもなくエイヤーっと決めたのでは意味がありません。
ですから、ファシリテーターであるあなたは、メンバー本人が意味ある目標が決められるように質問によって導いていくのです。
「あなたが仕事を通じて最も得たいものは何か」「顧客が喜んでくれる成果とは何か」「心から達成感を味わえるために、どんな目標はいいだろうか」その上でどんな助言、応援も惜しまないことを伝えます。
もちろん、個々の目標であってもチームの目標ですから、チームとして共有し、まずチャレンジングな目標設定に対して皆で褒め合い、チームとし協働しながら達成していくことをコミット(固く誓い合う)します。

このようにリーダーの関わり方とチーム成長には明確な相関があり、チームの状態によってリーダー自身の関わり方を調整し、進めて行きます。
確かに現実は簡単ではありません。しかし、私たちは一緒の職場で気まずい関係の中で成果を求められるよりも、信頼できる関係を作りながら成果を出していきたいと誰しもが願っているのです。そして、この取り組みには経験も年齢も立場も関係なくチームの全員が関わっていけるテーマなのです。

まさにリーダーはリーダーシップを発揮して素晴らしいチームを創っていっていただきたいと思います。


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