仕事の教え方のコツ

「丁寧に教えているつもりなのに、どうしても理解してもらえない。」
「情熱をもって向き合っているのに、部下のやる気を感じられない。」
そんな経験をお持ちではありませんか?
部下を思い、忙しい時間をやりくりして教えるための準備をして、手順の指示までしているのに、なぜわかってくれないのか?

今日は、私自身の経験も含め、教え方のコツを2つの切り口からお話しさせて頂きたいと思います。
一つ目は、相手の性格を見極めた教え方のコツ。
もう一つは脳のクセから見た教え方のコツです。

■相手の性格を見極めた教え方のコツ
まず、ウィリアム・グラッサー博士による選択理論心理学の中で伝えられている考え方をご紹介致します。
《人は自分の欲求を充足してくれる人に好意を持ちます。そしてその充足してくれる人に対して貢献したいという欲求が生まれます。》

人は何らかの欲求を持っています。欲求とは辞書によれば、「心理学で、生活体に生理的・心理的な欠乏や不足が生じたとき、それを満たすための行動を起こそうとする緊張状態。」とあります。無いものを満たしたいという思いが前提ですから、それを満たしてくれる人に対して好意を持つことは良くわかります。また欲求を充足してくれる人に対して役に立ちたいという気持ちが起こることも自然なことと言えるでしょう。

この視点、実は意外に見落とされがちなポイントになるのです。

一般的な仕事を教える際のポイントとしては
・教育に伴う事前準備
・作業の手順とその意義の理解
・部下からの報・連・相(ホウレンソウ)~アドバイス

等が挙げられます。もちろんこれらは大切なことなのですが

ここで忘れていけない事は、あなたが上司として、部下がしたいことを支援する存在であることです。
あなたが部下にどう接したいのか?という視点ではありません。
部下はあなたにどう接して欲しいのか?
その視点を踏まえて仕事を教える必要があるのです。

私自身の失敗談です。
新しく私の部下となったA君、私と同じく違う業界からの転職組でした。積極性が高く自分の理想を熱く語る情熱も兼ね備えた彼。私は彼に大いなる期待をしていました。そしてこの会社で大きく成長して欲しいと願っていたのです。もともと教えることが好きな私は、手取り足取り仕事上必要なことを教えていきました。書類関係は記入するためのマニュアルを作成し、商品を理解するための勉強会を開催。何度も疑問点が無いかコミュニケーションを図るように気を使いました。
初めは極めて良好な関係が続きました。私の指導を素直に受け入れて、積極的に業務に取り組む姿を見て嬉しく思ったものです。
ところが、3か月ほど過ぎるとA君の態度が変わってきたのです。これまでの積極性が薄れてきました。指導をしていても生返事のような受け答えがあり、「それは聴く態度じゃないだろう!」と彼を叱責したのです。A君は「すみません。」と謝罪したものの私との関係悪化していきました。
「こんなに一生懸命教えているのに、どうしてあいつはわからないんだ!」私のフラストレーションも日に日に募っていきました。
彼が入社して半年ほど過ぎた頃、A君が他の社員と話している会話を小耳にはさんでしまいました。
「先輩!B課長って、うっとうしくないですか?いちいち細かく指示してくるし、そんなに言うなら自分でやればいいのに!」
正直ショックでした。
A君が困らないように。親心だと思ってしていたことを全否定されたような気がしました。その後も丁寧に仕事を教えていきましたが、結局彼との溝は埋まることがなく1年後に退職していきました。

前述のウィリアム・グラッサー博士によれば心理学上での分類には以下の欲求があるそうです。
① 愛・所属の欲求
② 力・価値の欲求
③ 自由の欲求
④ 楽しみの欲求
⑤ 生存の欲求

誰もが全ての欲求を持っており、人によって欲求の強さは別々なのだとグラッサー博士は話されています。
あなたは、どの欲求が強いと感じますか?
私の強い欲求は、①愛・所属の欲求でした。人を愛し、受け入れていくことに価値を感じます。先ほどの事例に戻ると、私が手取り足取り教えたいというスタイルはこの欲求が強いことに起因していたのかもしれません。
この理論を学び、A君は③自由の欲求 が強かったのではないか?と考えてみました。積極性に溢れ、自分の理想をしっかりと持っていた彼は、もっと仕事を任せて欲しかったのではないか?そう感じたのです。いつまでも手取り足取り指導されることは、彼自身の存在価値を認めてもらっていないこと。そう考えると、私は有能な人材をみすみす逃してしまったことになります。お恥ずかしい限りですが、それでも当時の私は精一杯彼と向き合っていたと、つまり自分が正しく、部下が悪い。そう考えていたのです。
ずっと丁寧に教えることが良い指導と受け止めてくれるかどうかは、相手の価値感によって変わる。言われてみれば、当たり前のことかもしれませんが、当時の私には理解できないことでした。
相手のタイプを見極めて、どの欲求を充足して欲しいのか?
それを踏まえた指導をすることが、効果を上げることに繋がって行くのです。

私が銀行員時代に体験した仕事の教わり方は実に様々ですが、今でも心に残っているのは「あなたを信じている。」「あなたと仕事がしたい。」と支店長から言われたことでした。私の①愛・所属の欲求を満たしてくれたのです。
その支店長はバイタリティに溢れる率先垂範型。時間が空けば客先訪問をこなしていました。時にはそのエリアを管轄している営業課長より訪問頻度が上がることもありました。私の目から見える支店長は、まさにスーパーマン!マネジメントと客先訪問を同時にこなすひたむきな姿は感動的ですらあったのです。その支店長から言われたのが前述の「あなたを信じている。」「あなたと仕事がしたい。」という言葉。バリバリ仕事をこなす支店長が、未熟な私に対して、まず一人の人間として相対してくれたのです。
仕事が出来るからとか、従順に言う事を聞くから認めてくれるのではなく、一人の人間としてその尊厳を認めてくれた。これには気持ちが奮い立つほどのインパクトがありました。このコミュニケーションは支店長に対する大いなる忠誠心を育む素となりました。
支店長からは仕事上、どんなに厳しい叱責を受けても感謝の気持ちでそれを受け取ることが出来ました。
何を言われるかも大切ですが、誰から言われるか?という視点をどうぞ心に留めておいて頂きたいと思うのです。
私が信頼できない支店長から叱責されれば、表向き謝罪したとしても心の中では反感を抱き、この人には関わりたくないという否定的な感情に繋がって行ったことでしょう。
かつて、私が有能な人材を逃してしまった時の様に。

■脳のクセから見た教え方のコツ

個人差はありますが、脳は物事を大きく(難しく)捉える傾向があります。必要以上に大きな問題として難しく捉えるという意味です。
特に、精神的にプレッシャーが係る場合(初めての仕事や苦手意識がある、自信がない等)はその兆候が顕著に現れます。
部下を育てる際には、まずこの部下の気持ち(脳のクセ)を知っておくと良いでしょう。

一方脳は理解するためには細かく見ていく必要があるという側面も持ち合わせています。
なるほど!と腑に落ち感を持たせる教え方の工夫が必要です。

まずは概略として全体像を教えてください。
そしてその後に細部の指導をしていくのですが、その指導の途中でも今全体のどの部分について説明しているのかを時々確認することも大切です。脳は常に最新の情報にひっぱられるというクセがあるので、話しを聞き続けていると今、どの部分の話なのか?(全体の中の)無意識下で分からなくなる可能性があるのです。整理しながら理解を促進するためにこの手法は有効です。
教えた内容については自分の言葉で再現させてみましょう。再現ができなければ部下が本当に理解した事にはならないのです。理解の弱い部分についてはどうぞ丁寧に教えてあげて頂きたいと思います。
また理解できたか確認する意味で、部下に別の誰かに学んだことを伝えるロールプレイングをしてみるのも有益です。これをすることで、あなただけでなく、部下自身も自分の理解がどの程度かわかります。

今後、教え方を通して、成果をあげる部下とのコミュニケーション。具体的な実践ポイントについてもお伝えしたいと思っています。


カテゴリ:コラム

タグ:

y[W̐擪