新人の研修指導

昨今の新人育成上の課題は「答えが決まる課題解決が出来る事=有能」であるという学校で通用した理屈を「答えのない課題を臨機応変に解決が出来る事=有能」であるという社会で求められる能力との違いを正確に認識させ、その現実として求められるニーズに自らの能力を磨きなおす決意を促すことにあります。

この学校教育によって育成される能力と社会で求められる能力とのギャップを埋めるための要件として、2006年から経済産業省が下記の社会人基礎力を提唱し始めました。

【社会人基礎力】
■前に踏み出す力(アクション) 一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力
1. 主体性:物事に進んで取り組む力
2. 働きかけ力:他人に働きかけ巻き込む力
3. 実行力:目的を設定し確実に行動する力

■考え抜く力(シンキング) 疑問を持ち、考え抜く力
1. 課題発見力:現状を分析し目的や課題を明らかにする力
2. 計画力:課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力
3. 創造力:新しい価値を生み出す力

■チームで働く力(チームワーク) 多様な人とともに、目標に向けて協力する力
1. 発信力:発信力自分の意見をわかりやすく伝える力
2. 傾聴力:傾聴力相手の意見を丁寧に聴く力
3. 柔軟性:意見の違いや立場の違いを理解する力
4. 状況把握力:自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力
5. 規律性:会のルールや人との約束を守る力
6. ストレスコントロール力:ストレスの発生源に対応する力

さて、この3つの能力と12の能力要素は学力を指すものではなく、冒頭でお話した現実の課題を解決するためコンピテンシー(実力要件)を指しています。

では、これらの要素をどのように育成指導していけばいいのでしょうか。
具体的な指導、教育シーンとして考えてみると効果的に指導していく上での幾つかのポイントが見えてきます。

まず、「前に踏み出す力(アクション)」について考えてみましょう。

一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力
 主体性:物事に進んで取り組む力
 働きかけ力:他人に働きかけ巻き込む力
 実行力:目的を設定し確実に行動する力

「前に踏み出す力」は本来、誰でもが潜在的に持っている力です。しかし、それが発揮されないのはなぜでしょうか。それは「前に踏み出す力」が、どんなに知識をつけてもそれだけでは向上しないということです。
では、何が必要なのか、それは「自信」と「自立性」です。このマインドがあることで初めてこの力が開花するのです。しかし「自信」「自立性」を育むためには育成環境がとても重要になります。
学校教育の仕組みを考えてみると、決められたカリキュラムに従って授業を受け、減点主義を主体とした試験によって評価され続ける。この環境では「自信」も「自立性」も育むことは困難です。学校の活動では自信を持つ機会が乏しく、自分の意志によって自らの行動を選択することも少ない。結果として自信と自立性の成長を促進できないまま社会に出ることになります。
ですから、「主体性」「働きかけ力」「実行力」を育むためにはスキルではなく、選択肢を与え、少しでも出来たことに対してしっかり褒め、自信をつけさせるというマインドやメンタルのへの配慮が最も重要になのです。

次に「考え抜く力(シンキング)」について考えてみることにしましょう。

疑問を持ち、考え抜く力
 課題発見力:現状を分析し目的や課題を明らかにする力
 計画力:課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力
 創造力:新しい価値を生み出す力

「前に踏み出す力」同様、私たちは誰でもが「考え抜く力」を潜在的に持っています。しかし、新人に限らずそれらが積極的に活かされないのはなぜでしょうか。

それは組織に「安全な場」が無いからです。「安全な場とは:非難、否定の無い本音が言える/言い合える場」を意味しています。
意見を持っていても「聞いてもらえない」「否定される」「軽んじられる」など新人だから若手だからという理由でなかなか意見が通らない。このような状況が続けば、当然のことながら考えることを止め、指示待ちになるのは必然です。
ですから、安全な場を創ったうえで、どんな意見であっても傾聴することを基本とし、その上で課題発見の方法や計画の仕方をしっかり指導、教育していくことで、実践で役立つ「考える抜く力」が育成されるのです。

最後の要素「チームで働く力(チームワーク)」について考えてみましょう。

多様な人とともに、目標に向けて協力する力
 発信力:発信力自分の意見をわかりやすく伝える力
 傾聴力:傾聴力相手の意見を丁寧に聴く力
 柔軟性:意見の違いや立場の違いを理解する力
 状況把握力:自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力
 規律性:会のルールや人との約束を守る力
 ストレスコントロール力:ストレスの発生源に対応する力

さて、上記の6つの要素をスキルとして教育するだけで本当にチームワークが高まるでしょうか。答えはNOです。チームワークはスキルだけで創れるものではないからです。
最も重要な要素はチームメンバー間の「信頼関係」です。どんなに発信力、傾聴力のスキルを磨いても互を信頼できず、本当の課題や悩みについて話し合うことができなければ、チームワークの本質である相互支援、協働が行われず、本来チームが持っている力を充分に発揮することはないのです。

また、前述の「安全な場」がなければ上記の「チームで働く力」の6つの要素を磨く機会そのものをチーム内で経験することができません。これらの能力は座学で磨けるもではなく、実業務の活動を通じてOJTとして指導、教育されていくものです。

以上が社会人基礎力を強化するためのポイントです。

■新人教育、育成の方法
以上のポイントを踏まえ新人教育、育成の実務についてお話していきたいと思います。
新人教育において重要なことは、しっかりとした計画と当事者である新人本人に自分がどこに向かってどのような成長を期待されているのかといったゴールを明確に示すことです。

まず手始めに行わなければならない重要なステップが「人材像」の設定です。人材像とは、育成期間が修了したときどのような人材になっていて欲しいかという具体的なゴールです。

例えば育成期間の1年間が修了した1年後
・社会人として必要なこと:社内ルールや体外のお客との対応、「報告・連絡・相談「といった日常のコミュニケーションなど、社会人として身につけていないと仕事にならないもの

・業務における目標達成に必要なこと:これは各部門で必要となる専門知識や行動様式などですね。この理解の為には1年後にどの程度の実務成果を求められるかをしっかり説明し、それを達成する為に何を身につけておかなければならないかを新人本人が納得できるまでしっかり話をします。

・組織で働くために必要なこと:これは「社会人として必要なこと」と同じように捉えられるかもしれませんが、本質的に異なります。「社会人として必要なこと」は個人として活動するために必要となる社会ルールを身につけることが主な目的となりますが、チーム或は組織で活動することを必ずしも前提にしていません。
組織で働く仲間がチームワークを発揮して、一人では創り出せない大きな成果を生み出すためには、リーダーを始めとしたチームメンバーの一人ひとりのチーム創りへの貢献が必要です。例えば本音で話せる関係性を創るためのコミュニケーションについて理解を深め取り組むことや、互いの成功を喜び合ったり時には助け合ったりすることで、チームとしての一体感が生まれそれがチームとしての大きな成果に繋がっていきます。
とても重要なテーマです。

このように人材像(育成目標)を明確にし、指導者も新人も同じゴール向かって進めるようにしていきます。
ゴールが決まったら次はロードマップ作りです。つまり、最終的なゴールに着実に近づけるように新人の能力レベルに合った達成可能な短期目標(マイルストーン)を設定し、達成感を味わいながら進められるように計画を作るのです。
研修や学習はどうしても無味乾燥になりがちです。そのままでは新人の学習意欲は徐々に減退し、研修効果も低くなります。その解決のためには今日の「出来た」が明日の「がんばり」を作り、成長実感を味わえる仕組みが必要なのです。
ですから、1日、1日の目標は可能な限り細かく設定し、新人本人が着実に進んでいるという成長実感が持てるように配慮します。そして「できるようになったこと」はどんな小さなことでもしっかり褒め、自信を育んでいきましょう。新人に自信がついて来ると自ずと自立性も高まってきますから、自発的な取り組み姿勢が生まれてきます。
そして、褒める回数は多ければ多いほどいいです。あなたの褒める言葉や笑顔に新人がやる気になる。新人が成長する姿を見ることも育成指導者の醍醐味です。楽しんで進めてください。

最後に『新人の指導ポイント』については具体的にお話することにしましょう。

下記が新人の指導、教育で必要となる具体的な関わり方です。指導者であるあなたはとても忙しいと思います。ですから、出来る限り効率的に教育する方法を探しているのではないでしょうか。
しかし、人材の育成成果は結局、どれだけ手間ひまかけたかなのです。新人の社会人としての未来は入社3年までの育成、指導が大きく影響します。ですから、新人教育は新人の人生を左右する重要なものであることを理解して欲しいと思います。

【新人の指導ポイント】
□何でも話せる人間関係
□明確な目標と役割設定
□良い仕事とはどのようなものかの基準
□期限/優先順位
□仕事に関するデータの収集方法と共有方法についての具体的なやり方
□アクションプラン:いかに、いつ、誰と行うかなどの具体的な指示
□新しい技能を学習するための段階的なプロセス
□実地研修:やり方の実例理解、実践と解説
□練習する機会と余裕
□頻繁な確認と問題の解決に対する具体的な支援

以上の指導ポイントはこれから新人研修を担当される方にとっては指導の為の参考になると思います。また、既に指導に当っている方にとってはチェックリストになると思います。
是非活用してください。

新人は素材としてはとても優秀です。その素材を活かせるかどうかは、私達、指導者が彼らの育ってきた環境を理解し、新人の成長に適した指導方法、教育方法を学び実践することが出来るかどうかにかかっています。

新人研修期間が終わる時、「あなたが指導者で良かった」と感謝の言葉が自然と返ってくるような、関わりを持っていただきたいと願っています。


カテゴリ:コラム

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