相性の合わない上司・部下との人間関係

誰とも関わりを持たずに仕事をすることは出来ない以上、上司と部下の人間関係は誰もが頭を悩ませる問題ではないでしょうか?私自身20年超のサラリーマン経験を持っていますが、上司・部下双方の経験の中から人間関係構築の難しさに悩んできました。

卒業後就職した金融機関は完全なる縦社会文化。体育会系のノリで、上司の発言は絶対的なものでした。バブル後期、目標数字は100%達成することは当然で300%とか400%の達成が求められる時代。数字を上げることだけでは、評価に直結しないのです。他者との差が付かないのです。

すると昇進していくためには上司にかわいがってもらえる事が必須。上司との人間関係を構築するために“服従”意外の選択肢はなくなります。先輩から、○○支店長は影響力が強いとか、△△副支店長は本部に強いコネがあるとか、話を聞かされ、派閥入りを勧められるのです。

誰にぶら下がるかで昇進が決まるといっても過言ではない環境。当時はそんな時代でした。みんなが、そう行動していると感覚がマヒしてきます。それが普通だと。
絶対服従が日常化しているという、今思うと恐ろしい環境にどっぷり漬かっていました。では服従していた上司の事を尊敬していたかと言えばむしろ逆でした。権力者に対する憧れのような感情はありますが、尊敬の念とはちょっと違っていたのです。

「まだ、終わらないのか!早く仕上げろよ!」
「何で全部言わなきゃわかんないんだ!」

業務時間外でも、その上下関係は続きます。

「飲みに行くぞ!」

と誘われれば、断るという選択肢は与えられていませんでした。ほぼ連日終電まで宴は続きます。ここではお話出来ないような、ハメの外し方に当時の私はただ驚くばかりでした。金融業の厳しさは、業務時間外のストレス発散の場なくしては務まらなかったのかもしれません。

とにかく、命じられた仕事を正に歯車の一枚として回り続けることが私の役割。そこに自分の意思はなく、潤滑油を与えられることもなく、ひたすら走りまわされる日々。言葉は悪いのですが、

「使い捨てにされるかもしれない」

という感覚があったのは事実です。逆に

「使い捨てられてたまるか!」

という思いが自分のモチベーションの源泉でした。いかに自分を疲弊させずに、うまく立ち回るか?これが、当時の私の考えの全てでした。そこには会社の目標など微塵も存在していませんでした。日々、生き残る事だけに意識が向いていたのです。金融系は転勤が多いですから、何人もの上司に仕えましたが(7年で20名ほどでしょうか?)残念ながら心から尊敬できる上司は、わずか1名だけでした。尊敬できる1名の方がどんな上司だったかと言えば、

・仕事を見るのではなく、私自身を観てくれる 
・率先垂範
・良い所を見てくれる
・取引先から頼りにされる
・話をきちんと聞いてくれる
・本音で話してくれる

ミスをした時に、人格を否定されるとやる気は萎えていきますが、それでも私という部下を、一人の人間として尊厳を持って接してくれる。悪い部分ではなく、良い部分を観てくれる。現場では、自ら率先して前を走って行く姿を見せ、取引先へ訪問すれば、待ってましたとばかりに相談事を持ちかけられる・・・

その顧客との信頼関係の深さを目の当たりにするのです。報告や相談をすると、仕事の手を止めてきちんと耳を傾けて聞いてくれる。忙しそうにしていても、こちらの話を最後まで聞いてくれる。ときには厳しく叱咤される事もある。でも本音だからこそ素直に耳を傾けることが出来た。

では、自分が上司となった時、どのように部下と向き合っていたのか?恥ずかしながら、部下の為という大義名分を振りかざし、真逆の対応をしていたことがほとんどでした。私の部下たちは、

行動が遅く、理由を聞くと言い訳ばかりする。
アドバイスをしても、できない理由ばかり言う。
ネガティブ発言が多く、会議でも冷めた態度で臨む。

いつの間にか私は尊敬できなかった上司たちと同じ振る舞いをしていました。自分の部下を育てることを放棄していたのかもしれません。使い捨ての歯車として捉えていたのでしょう。当然、部下との人間関係が全く機能していませんでした。

ある日、部下が私に差し出した辞表。部下の中では、私が目をかけている存在だったので驚きを隠せませんでした。

「あなたには、ついていけません。」

私は返す言葉が見つかりませんでした。絶句。その時、私は自分にとって都合の良い部下を求めていただけだと思い知らされたのです。実に情けない己の在り方でした。上司と部下はそもそも立場が違います。でもお互いに尊重し合うべき存在なのです。そのことを認識せずに向き合っていました。

上司と部下の人間関係構築のポイントは、「他者受容」、「自己開示」、そして「大切な存在として受け入れる」という3点。

人間関係を構築するために重要な項目である“他者受容”

まず相手の存在を認めること。自分と価値観が違うことを、敬遠する材料として捉えれば相手にもそれが伝わります。可能性を生み出す“違い”として認識することが大切です。この違いがあるからこそ、チームとしての相乗効果が生まれます。チームビルディング用語でいう“多様性”を発揮させるための第一歩が“他者受容”なのです。

次に自分から関わりを持つ努力をします。人を力で服従させても、心から従わせることはできません。人は外的な力では変えられないのです。

ビクトル・フランクルはその著書『夜と霧』の中で

「神に祈り、音楽を楽しむことが、収容所の過酷な生活を生き抜く大きな力になった。隣人に手を差し伸べる人もいた。どんな環境でも、どんな態度を取るかの自由は奪えない。」

と述べていますが、まさにどんな環境でも部下がどんな態度を取るかの自由は上司にコントロール出来ないものなのです。ならば、自分を変えてみる。自分の行動を変えて部下と関わるのです。

その際に意識したいのが“自己開示”

人は誰でも警戒心を持っています。初対面の人に、いきなり自分の過去を話したりしませんよね。出身地や、住んでいる場所、好きなスポーツだとか・・・当たり障りのない会話をするはずです。そこから共通点が見つかるとお互いの距離が近くなるのがわかるでしょう。

まずは、当たり障りのない話から始めてみましょう。きちんと部下の目を見て、心を込めて話すのです。ちょっと恥ずかしかった思い出や、失敗談が話せるようになれば部下との距離もぐっと近づいていると感じることが出来るでしょう。

ここまでの2つのポイントを実践するだけも人間関係は良質なものとなってきます。部下に対する尊厳を認めて仕事で関わる。そして自分の心を開くことが出来れば必ず関係性は高まります。「選択理論心理学」を提唱されているウイリアム・グラッサー博士は「人は基本的欲求を満たしてくれる人に好意を持つ」と話されています。相手の存在を認めることは、ここで言われる基本的欲求の一つなのです。あなたが、何かをしてくれるから受け入れるという“条件付きの愛”ではなく、存在そのものを認めることが大切なのです。

あなたが部下から、そういう態度で向き合われたら好意を持ちませんか?また、人は自分の事を大切に思ってくれる人に対してマイナスの感情を持ちにくいものです。

「あまり飲みすぎるなよ。」

嫌いは友人から、こんな言葉をかけられたら、

「大きなお世話だ。」

 とか

「うるさい。」

とか感じるでしょう。

その一方で親友から言われたなら、

「ありがとう。健康の事もあるし気を付けるよ。」

と素直に受け止めることができます。

自分のことを大切に思ってくれている・・・心からそう思える人からの言葉は、解釈が変わるのです。あなたが、部下の事を大切な存在として受け入れる。大切な家族のように、いつでも大切な存在だと思えるようになったら、そして、部下があなたに大切だと思われていると実感できる関係性が構築出来たら・・・部下はあなたにどんな態度を取るようになると思いますか?

あなたが出来る事は、あなたの行動を変えること。あなたが変わることで、部下の変容の機会を待つことだけなのです。どうぞ、部下の存在を認め、自らの心を開いてみて下さい。そして部下を大切な存在として受け入れることを習慣化してみて下さい。必ずや、上司と部下の良質な人間関係が構築されていくことと思います。


カテゴリ:コラム

タグ: , ,

y[W̐擪