部下の叱り方、育成・指導方法

成長しない人間はいない

そもそも人間には強烈な成長欲求があります。それは、変化する自然環境や社会環境の中で淘汰されないためです。ですから、成長することは本能的で生存に直結した活動だと言えるのです。

しかし、部下を持つリーダーは成長欲求をむき出しにした部下を持ったことがあるでしょうか?

部下を見ていると自主性が乏しく、言われないと動かない。言われたことも満足に出来ていないと感じる。・・・ため息が出る。

成長欲求の片鱗も見えない。勢い、感情的に叱ってしまう。

本当に彼ら部下の中に強烈な成長欲求なる本能があるのだろうか。もしあるとすれば、それを阻んでいるものは何なのでしょうか?

私は植物を見ていると、その生命の逞しさとひたむきな姿勢に心打たれます。どんな過酷な環境に置かれてもひたむきに成長し続け、花を咲かせ散っていく。
花は逆境の中でも只々美しく咲く。

しかし、人間の成長は環境に大きく左右されます。
人間(部下)を植物に例えると、部下を枯らす環境と成長させる環境があると言うことです。

そして、その環境の中の重要な要素として部下を取り巻く人々の影響が大きいと言う事です。特にビジネス組織の場合、大きな影響を与えるのは直属の上司です。
ですから、目の前の部下が成長に前向きでないとしたら、それは上司である私たちの日常の指導や教育の仕方が誤っている可能性が高いのです。

では、部下が成長する育成と成長できない育成の違いとは何でしょう。

部下が成長しない育成とは

育成には幾つかの重要なポイントがあります。

1.育成目的の理解度
2.育成目標の理解度
3.部下の育成レベル把握とレベルに適した指導法

まず、『育成目的』について考えてみることにしましょう。部下の立場で考えると、育成目的とは「何のために」学ばなければならないのかといった学習行動の意味を指します。
ただ、「これを勉強しろ」「これをやっておけ」といった指導は目隠しした状態で100mを走らせるのと等しい行為です。「疑問」「不安」「徒労感」だけが生まれ、学習者の成長に役立つことはありません。

ところが、このような指導をしている方にこの問題点を指摘すると「分からなければ聞けばいい」といった回答が返ってきます。ごもっともです。しかし、目の前の部下は頻繁に質問して来るでしょうか。
多分、あまりしてこないと思います。

そもそも日本人は質問が苦手です。その上、部下から見て上司と気軽に話し合える関係性ができていなければ到底、質問などできないのです。

結局、部下の内面に「不安」や「疑問」や「焦り」が溜まっていくことだけに時間が消費されていきます。

次に『育成目標』ついて考えてみましょう。これも部下の立場で考えてみると育成目標とは「何時までに、何を」達成すれば良いのかといったマイルストーンやゴールを意味します。これも先ほどの例と同じようにただ、「これを勉強しろ」「これをやっておけ」といった指導では、自分の学習行動や速度に対するイメージができず、学習に対するモチベーションを著しく低下させていきます。
私は小学校の頃の夏休みの宿題を思い出すのですが、毎日地道にやればいいものを夏休みが終わる三日前くらいから必死でやり始める。そして、学習の質はというと内容の理解でではなく、とにかく空欄を埋めるのが目標になってしまう。私達はしっかりしたスケジュールとチェックポイントがないと、価値の高い活動とペース配分ができないのです。

最後に『部下の育成レベル把握とレベルに適した指導法』について考えてみることにしましょう。このお話は指導する側の育成のための「引出し」がいくつあるかによって出来る、出来ないが決まってしまいます。

つまり、「全くの初心者に対する指導法の引出し」「ある程度成長している中堅に対する指導法の引出し」「自律的に行動できる熟練者に対する指導法の引出し」などです。

これまで例に挙げてきた「これを勉強しろ」「これをやっておけ」が通用するのは自律的に行動できる熟練者だけです。

育成が本当に必要な部下の多くは「全くの初心者」か「ある程度成長している中堅」だと思いますから、もう少し丁寧で的確な指導が必要になります。

では、どのような指導法が必要になるのかをお話していくことにしましょう。

部下が育つ育成とは

まず、『育成目的』についてお話する為には「人材像」という言葉の理解が必要です。人材像とは、育成期間が修了したときどのような人材になっていて欲しいかという具体的な要件です。

例えば育成期間の1年間が修了した1年後
・社会人として必要なこと:社内ルールや体外のお客との対応、報告連絡相談といった日常のコミュニケーションなど、社会員人?として身につけていないと仕事にならないもの

・業務における目標達成に必要なこと:これは各部門で必要となる専門知識や行動様式などですね。この理解の為には1年後にどの程度の実務成果を求められるかをしっかり説明し、それを達成する為に何を身につけておかなければならないかを部下本人が納得できるまでしっかり話をします。

・組織で働くために必要なこと:これは「社会人として必要なこと」と同じように捉えられるかもしれませんが、本質的に異なります。「社会人として必要なこと」は個人として活動するために必要となる社会ルールを身につけることが主な目的となりますが、チーム或は組織で活動することを必ずしも前提にしていません。
組織で働く仲間がチームワークを発揮して、一人では創り出せない大きな成果を生み出すためには、リーダーを始めとしたチームメンバーの一人ひとりのチーム創りへの貢献が必要です。例えば本音で話せる関係性を創るためのコミュニケーションについて理解を深め取り組むことや、互いの成功を喜び合ったり時には助け合ったりすることで、チームとしての一体感が生まれそれがチームとしての大きな成果に繋がっていきます。
とても重要なテーマです。

次に『育成目標について』考えてみましょう。ここで重要となるのは最終的なゴールを短期目標(マイルストーン)の積み重ねとして設定していくことです。
私達は1年先の目標から逆算して計画的に学習を進めることはとても苦手です。ですから、日々のやる気を持続させるためには短期間で成長実感を味わえることが必須要件です。
今日の「出来た」が明日の「がんばり」を作るのです。
ですから、日々の目標は可能な限り細かく設定し、「できるようになったこと」はどんな小さなことでもしっかり褒め、自信も育んでいきましょう。部下に自信がついて来ると自ずと自立性も高まってきますから、自発的な取り組み姿勢が生まれてきます。
そして、褒める回数は多ければ多いほどいいです。あなたの褒める言葉や笑顔に部下がやる気になる。素晴らしい光景ですね。

指導のポイント

最後の『部下の育成レベル把握とレベルに適した指導法』については具体的にお話することにしましょう。

特に「全くの初心者に対する指導」についての具体的な指導ポイントが分かれば、あとは部下の成長に合わせて主導権を部下に渡していけば良いと考えてください。

下記が初心者の部下が欲している指導です。

【初心者の部下の指導ポイント】
□何でも話せる人間関係
□明確な目標と役割設定
□良い仕事とはどのようなものかの基準
□期限/優先順位
□仕事に関するデータの収集方法と共有方法についての具体的なやり方
□アクションプラン:いかに、いつ、誰と行うかなどの具体的な指示
□新しい技能を学習するための段階的なプロセス
□実地研修:やり方の実例理解、実践と解説
□練習する機会と余裕
□頻繁な確認と問題の解決に対する具体的な支援

さて、あなたはどこまで指導実践できていますか。
確かにリーダーの皆さんは日々忙しく、ここまで時間を割いて部下の育成に取り組めない方も多いのではないかと思います。しかし、部下が育たなければ結果としてあなたの忙しさは解消されることはありませんね。

もちろん育成はリーダー一人の問題ではありません。組織としてメンバー全員で互の成長に協力することはチームワークを生み出す源泉にもなります。皆で役割を決めるという視点も盛り込んだうえで、人材が育つ組織を創っていって頂きたいと思います。

「叱る」を効果的にするには

叱る方が良いのか褒めることが良いのかといった議論がされることがあります。それは部下の立場で考えれば、わざわざ叱られることを良しとする方は少ないのではないかと思います。
しかし、ある条件が整えば「叱る」ことが褒めること以上に効果を発揮することがあるのも事実です。

そこにも明確なポイントがあるのです。それさえ分かれば叱って良い相手かどうかは一目瞭然です。

では、あなたに質問します。

「あなたにとって叱られても感謝できる人は誰ですか」思い浮かべてください。
思い浮かびましたか。
「どうしてその方なら叱られても感謝できるのですか」そこに叱ることが効果的に働くポイントが隠されています。

そこには深い信頼関係や尊敬の念や自分のことをしっかり理解されているという実感があるはずです。だからこそ褒められても叱られても自分のために言ってくれていると感じることができるのだと思うのです。

つまり、このような行動は行動を取る側ではなく、行動を受け取る側がどう感じるか。そして、同じことを言っても感謝できる関係があるかが最も重要なポイントなのです。

逆説的に言えば、嫌いな相手から褒められても嬉しいと感じる人は少ないですね。

叱ることは褒めることよりもメッセージ力が強い。ですから、良い関係性がないところに強いメッセージを投げつければ相手は傷つき、やる気はどんどん下がっていきます。

逆に、失敗して後ろ向きになっていても信頼している人からの強いメッセージは受け取った人を鼓舞し前向きに姿勢を変え、しっかり前進していく後押しになります。

重要なことは叱ること褒めることではなく、それが受け取った人間をポジティブにする關係創りだということをご理解いただきたいと思います。


カテゴリ:コラム

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