1.チームマネジメント、まず、何をしたらいいのか?
◆仲良しになろう。
よく「リーダーは孤独だ!!」と嘆く声を聞きます。確かにメンバーからリーダーになったとたんに周りの味方も変わるし、昨日まで気軽に愚痴を言い合ったり、悩みを相談したり出来たのに、それも出来にくくなります。結果としてリーダーが一人で色々な課題を抱え込み、チームの中でリーダーだけが孤立しているように錯覚します。そして、次には「メンバーは私を支えてくれない」と感じ始めます。改善提案や新しいアイデアの提案を促しても、誰からも返ってこない。結果、いつも自分で何とかすることになる。或いは、強制的に出させることにエネルギーを使う。そして、ますます、メンバーとの距離感は開いていく。
中にはみるみるモチベーションが落ちていくメンバーがでてくる。あからさまにリーダーを避けるメンバーがでてくる。そして、チームとしての一体感や達成感はまったく感じられない。自分がリーダーになった時、こんなチームを作りたかったわけじゃないのに・・・
とまあ、これは良くある新任リーダーの悩みです。何故、こんなことになるのか?自分だけがこんな悩みをもっているのか?
それは違います!!皆、同じような悩みを抱えて日々四苦八苦しているのです。
何故、そうなってしまうのか?それには明快な理由とそして明快な対策があるのです。
あなたが本当に良いチームを創り、良いリーダーになりたいのならこれからお話しする6つのポイントを実践していってください。そうすれば、必ず、道は開けるのです。
【第1のポイント:仲良くなる】
良いチームを創ることと、良い人間関係を創ることとは同じ意味を持っています。人間は誰でも嫌いな人のために頑張ることは出来ませんし素直に相手の言葉を受け入れることも出来ません。
重要な事は、好かれること「好意的な関係の構築」です。と言っても、媚びたり、必要以上に優しくすることではありません。ポイントは「私はあなたを必要としている」ということをメンバーが実感できている
ということです。
2.マネジメントが上手くいかないのは、チームコミュニケーションが出来ていないから
【第2のポイント:ネガティブを歓迎する】
数年前からマネジメントからリーダーシップへという話をよく聞くようになりました。◇「マネジメント」は管理◇「リーダーシップ」は「指導力・統率力」を意味します。
リーダーには「管理」だけではなく「指導力・統率力」つまりチームをリードしていく(導く)力と能力が求められているのです。
しかし、残念なことですが、今本当にチームをリードできているリーダーは少ないと言わざるを得ません。「リーダーシップ」は、メンバーがついて来てくれることで初めて発揮することができます。
重要な事は、メンバーが“自発的”にリーダーについていく事を“選択”していることです。指示命令だけでメンバーを動かすことに疑問を感じないリーダーに、メンバーは自発的についていこうと思うでしょうか?
大げさに目標達成に向けて檄を飛ばしたり、無理やり引きずっていこうとすれば、メンバーの、やらされ感が高まり、主体性はどんどん無くなっていきます。私達がまだ若手の頃、同じように感じていたのではないでしょうか。
では、どうすればいいのでしょうか?何が問題なのでしょうか?その答えは、「スタート地点」と「スタンス」の考え方にあります。
「マネジメント」や「リーダーシップ」よりも、まずは、チームコミュニケーションを本来在るべき形にしていく事が必要です。これが「スタート地点」です。
チームコミュニケーションの在るべき形とは、単に話しやすい雰囲気や関係性を築くことだけではなく、どんなネガティブな事でも言える場を創るということです。そのためには、まず、ネガティブなエネルギーを出し切る必要があります。
ここでのポイントは顕在化した課題の解決を目的にするのではなく、出し切ることが目的です。つまり、言い合うだけではなく、それを受け入れ、“共感”と“傾聴”が大切なのです。チームが結成から高いパフォーマンスを発揮するまでのプロセスとチーム状態には法則性があります。チーム結成当初やチームが充分に成長していない状態では、チーム全体の雰囲気やチームメンバーの行動、言動は「暗黙のマインド」に支配されます。
暗黙のマインドとは、「場を乱さない(波風を立てない)ための配慮」「怒られたり、否定されないための配慮」「大きな責任を負わないための配慮」などの閉塞的なマインドです。
だから、メンバーは皆、チームがうまくいっていないと感じていても、課題を見ないように、口に出さないようにしています。このままでは、どのようなマネジメントもリーダーシップも有効に働きません。
あなたがまず取り組むことは、最初は一人ずつ、そしてじょじょに全員で、チームのネガティブなことについて自由に話ができる安全なマインドを創っていくのです。そうすることで、チームやメンバーの課題や悩みが表出=「見える化」していきます。
この時、リーダーには重要な役割があります。それは、一見すると身勝手と思われるネガティブな意見にも
絶対に“共感”するということです。これがチーム内のコミュニケーションの質の変化を起こす第一歩となるのです。
この“共感”するということが前述の「スタンス」を意味しています。「スタート地点」と「スタンス」についてご理解いただけましたでしょうか?そして、その先にある重要なキーワードが「安全な場」です。
3.チームを元気にする「チームステートメント」を創る
【第3のポイント:皆が気持ちよく仕事に取り組む為のルールを皆で考える】
さて、「安全な場」徐々に形になってきましたでしょうか?
「安全な場」ができてくるとチーム内のコミュニケーション量が増えるだけではなく、
悩みや問題が日常的に話し合われるようになってきます。
もちろん、チームのエネルギーも上がってきます。
チームのエネルギーとはメンバーのモチベーションや表情、姿勢に現れてきます。
このような状態にチームがなって来たら、ここからがチーム創りの始まりです。
やはりビジネスで求められるのは成果です。
どんなに雰囲気が良いチームが創れても、成果が出せなくては「仲良しクラブ」と言われてしまいますね。
そこで、チーム全員で
「私達チームとして達成したいこと」
「そのために皆で取り組むこと」
をテーマとして話し合い、チームステートメントを創っていきます。
チームステートメントとはチームとチームメンバーが気持ちよく仕事に取り組む(Win-Winになる)ための全員が尊守する決め事を明文化したものです。
「私達チームとして達成したいこと」とは、単に経営目標として与えられたものではなく
自分達にとって達成感や誇りをもって仕事をするためのビジョンを意味します。
これまで多くのチームの問題解決に関わってきた経験から分かったことがあります。
それは、ビジョンの中核に「価値ある目標」がある人は、長期に渡りそのモチベーションを維持することができると言うことです。
単に給料のためという考え方ではなく、
自分の取組んでいる仕事が誰かの役にたっているという具体的な“実感”
や仕事の意義や価値を自覚しているのです。
そして、その取り組みから生まれる“感謝や貢献”を充実感とし、さらに高い目的を自らに課し頑張っているのです。
しかし、それは一人だけで取り組んだのでは、いずれ息切れを起こしてしまいます。
ですから「そのために皆(チーム)で取り組むこと」をチームステートメントとして決め、
実行していく流れを構築する必要があるのです。
まずは、
「朝、元気にあいさつする」
「メンバーの誰かが疲れていたらコーヒーを入れてあげる」
といった事から始めて、段階的に
「お客様の要望を受けて自分なりのアイデアを1週間に1件以上出す」
「毎朝、10分、他のメンバーの課題を聞いてアドバイスする」
といったように義務感ではなく、自発的に楽しみながら取る組むことが重要です。
4.「絆」を創る対話を日常化する
【第4のポイント:考え方の違いを認識し、受け入れる】
やっとここからチームマネジメントの領域に入っていきます。
これまで、「(仲良くなる)好意的な関係の構築」「安全な場」「チームビジョン/チームステートメント創り」
についてお話ししていきました。
これらは、チームマネジメントの前段のチーム環境とチームコミュニケーションについてお話ししたものです。
チームリーダーの最も重要な仕事は、チーム力を最大化することです。良い人材をどこからか連れてくるのではなく、今居る人材の力と多様性を活かし、シナジーを引き出して、大きな成果を生み出せるチームに成長させていく事です。
そのために、チームの変化をしっかりと洞察してください。
チームの初期段階(最もチーム力が低い状態)では、既に第2話でお話したようにチームは閉塞的なマインドに支配されています。
そして、1話~3話の取り組みをすることで、個々のメンバーのマインドに変化が生まれます。
一般に“自己開示”と言われる状態です。閉じた状態からじょじょに開かれた状態に変化するのです。
この段階でチームはストーミングと言われるチーム状態に移行します。
個々のメンバーのマインドは開かれることで、自分の考えや今まで隠していた自我を表現することが出来るようになります。
このストーミング状態にチームが移行するとチームメンバーの間で意見の食い違いやぶつかり合いが多発してきます。
これは、一見、チーム状態が悪化したように見えますが、健全なチームの成長段階であり、同様にメンバーの多様性が活かされ出した兆しです。
ここでチームビルディングやチームマネジメントをしっかり学んでいないリーダーの取りがちな行動は、波風やぶつかり合いを抑えてしまうことです。
これは、チームの成長を逆行させる、とんでもないマネジメントです!!
ここでのポイントは価値観や意見の違いを歓迎し、大いに話し合いを促進させることです。
但し、気をつけなければならないのは、「安全な場」が出来ていない状態で本音をぶつけさせてしまうと、感情論や人格否定が始まり、寧ろチームのエネルギーを下げてしまうと言うことです。
「安全な場」が醸成された状態でストーミングに入ると、ぶつかり合いは目的や目標に向かって収斂されていきます。そして、個々の違いが尊重され、自然と他者を受け入れる姿勢が生まれていきます。
5.違いを強みに変えチーム力を最大化する技
【第5のポイント:違いは多様性、多様性は創造性の源泉】
ストーミング状態が続くことで、「自己開示」「他者受容」といったチームコミュニケーションの土台がしっかりと形成されます。
但し、この状態では未だ個々の意見の応酬ですから、チームのエネルギーもそれほど高まらず、同様にチーム成果もあまり生まれません。
ここで重要なポイントは小さくても良いので成功体験を通じて「他者受容」から「他者視点の獲得」へとチームメンバーの関係性を更に深めていくこでます。
具体的なテーマをチームとして達成する過程で、意見を出す事から、他者の意見を聞くことそして、相手の立場や視点で物事を捉えることが出来る段階に入ります。
この状態の変化によって、これまでの内向きなチーム思考が開放的で協調的なものへと変化し、「個々」の意見から「チームとして」の協働やアイデアと言う価値観が生まれます。
ここでの大きな特徴は、アイデアが提示されるだけではなく、どんどん実行に移されていくと言うことです。
これは大きな特徴です。チームの初期段階では、アイデアを実行することで起こる失敗が先にちらつき、議論が長引く割にはなかなか実行に移れない状態が見られます。
しかし、チームとして一体感が生まれ、行動出来るようになる段階(この段階をノーミングと言います)では、行動量が圧倒的に増え、課題は瞬時に行動に反映されるようになります。
そして、そこで生まれたアイデアを使って成果を生み出すことで、メンバー間、そしてチームとしての信頼感が生まれ、大きなチームエネルギーが生まれていきます。
チームリーダーにとって、
この多様性を創造性やエネルギーに転換する段階こそが、高いパフォーマンスを生み出すチームが創れるかの明暗を分ける大切な段階です。
◇重要な事はまず、必ず勝てる(達成可能な)目標を立て、達成すること
◇どんな些細な成果でも、リーダー自身がチーム誰よりも喜ぶこと
◇チームとしての「できる」という実感を自信に繋げていくこと
がとても重要です。
そして、この達成感や成功体験を続けていくことで、チームのモチベーションは
とても高いものになっていきます。
6.チャレンジシップを生み出す
【第6のポイント:「できる」から「やる」へ、ブレークスルーはこうして生まれる】
5話でお話ししたノーミングはチーム成長段階の4つの段階の3段階目になります。
本当のチーム力、チームシナジーはこのノーミング段階で初めて生み出されます。
このノーミングまでのプロセスを通じてチームメンバーは「他者視点」「協働意志とチームに対する信頼」「自己とチームに対する自信」を獲得していきます。
そして、いよいよ最終的なチーム状態へと移行していきます。
メンバーのマインドは「私はできる」から「私達(チーム)は出来る」に変化していきます。
同時にチームの価値を実感していきます。
チームの価値とは自分一人では到底創りだせない大きな成果やアイデア、付加価値をチームの力で生み出せると言う確信です。
そして、今のチームの一員であることに喜びと誇りを見出し始めます。
このマインドの獲得は、同時に高い成果や斬新なアイデアを生み出していく源泉にもなっていきます。
個々のメンバーの創造性も極めて高いものへと移行し、
メンバー同士の意見やアイデアの提示は、ぶつかり合いではなく、より高い成果の達成に向けられ、メンバー皆がイキイキ感やワクワク感をもって協働を楽しんでいます。
このチーム状態におけるリーダーの重要な役割は、チームをより高いチャレンジシップへファシリテート(導いて)していくことです。
単に高い成果を出すことを目標にするのではなく、今まで越えられなかった限界を超える取り組みへの導きです。
それは、「できること」から「やりたいこと」へと目標のレベルを転換することにあります。
“出来る”かできないかの「可能性の次元」から、“やる”かどうかの「コミットメントの次元」への転換です。
これは月並みの成果ではなく圧倒的な成果を生み出す最大のポイントです。
これが可能になるチームの成長段階が最終のトランスフォーミング段階です。
このトランスフォーミング段階のチームは、チャレンジングな目標を求めるだけではなく、より高次のミッションを自覚しています。
そして、目標、目的、ビジョンは与えられるものではなく、自らが創りだすものであることを深く理解しています。
リーダーはチームメンバーに問いかけます。本当に「やりたいこと」「達成したいこと」は何か?
チームはより高い明確な目標、目的、ビジョンを創りだし、コミットします。
これが、真のチーム目標であり、チームビジョンになります。
そして、成果は生き甲斐や遣り甲斐を伴った圧倒的な成果と価値を生み出すのです。
7.チームビルディングのプロセス(まとめ)
◆1~7を振り返り、チームビルディングのプロセスであることを検証
1話から6話までのお話しはすべて「チームビルディング」と「ファシリテーション」の理論と実践によって裏付けられているものです。
チームビルディングは「チームコミュニケーション」「チームマネジメント/チームリーダーシップ」にチームの成長プロセスというチーム創りの根幹を成す理論の上に構築されています。
そして、ファシリテーションは「ティーチング」「コーチング」を包含した学習(内省と気付き)を促進させる真の指導方法です。
ファシリテーションの有効性はメンバーの変容を外的な強制力ではなく、メンバー自身の自発性と選択によって生み出すことにあります。
この二つの「チームビルディング」と「ファシリテーション」の習得と実務を通じた活用は、これからを担うリーダーにとって必須となる能力です。
これなしには、これからの多様化し続ける人材と複雑化するチーム課題を乗り切る強いチームを創ることはできません。
逆に言えば、実務経験のある優秀な皆さんが、この二つの力を身につけることで素晴らしいリーダーへと成長できるのです。
ポイントをまとめます。
チーム創りはチームビルディングの4つの成長段階(フォーミング、ストーミング、ノーミング、トランスフォーミング)を促進させることを意味します。
◇第1のポイントは「仲良くなる(好意的な関係の構築)」
◇第2のポイントは「ネガティブを歓迎する(安全な場の構築)」
◇第3のポイントは「皆が気持ちよく仕事に取り組めるためのルールを皆で考える」
◇第4のポイントは「考え方の違いを認識し、受け入れる」
◇第5のポイントは「価値観の違いは多様性、多様性を活用し創造性を高める」
◇第6のポイントは「“できる”から“やる”へ、ブレークスルーを生み出す」
そして、この変化を創りだすためのファシリテーションのポイントは、問題解決ややり方論だけを突き詰めるのではなく、その場を支配しているマインドとチームメンバー間の関係性に着目し、マインドと関係性の質(閉塞→開示→他者理解→他者視点)の変化を促進させるための支援と機会の設定をすることです。
そして、最も重要な事はメンバーに期待する前にリーダー自身がメンバーに期待する変化を自らの行動や言動を通じで手本を示していく事にあります。
これらの知識を得て実践しても、チームが変わらないとしたら、それはリーダー自身の「他責」マインドが阻害要因になっていることは確実です。
チームの成長はリーダーの成長を伴って進んでいきます。
リーダーの成長は、これまでお話ししてきた取り組みを通じて、着実に進んでいきます。
リーダーにとって最も重要な気付きは、チームの成長はリーダーの成長と同意だということなのです。